ふるさと熱電マガジン

地域と地熱を繋げる情報を発信! ふるさと熱電マガジン

次世代型地熱発電システム クローズドループの実態

これまでの地熱発電の市場規模は、ほかの再生可能エネルギーと比べても小さく、グローバルなビジネスの分野で注目されることはほとんどなかった。ところが、新しいスタイルの地熱開発技術が登場した近年、にわかに脚光を浴び、桁違いの資金が投入されるようになっている。

それが、アドバンストクローズドループ(AGS/以下、クローズドループ)という工法である。

クローズドループの工法は、水圧で地下に割れ目をつくるのではなく、ドリルなどで岩を掘削し、人工の管を使わず岩の中に地上と地下とをつなぐ網目状のループをつくる。そこに水を循環させて温度を高め、蒸気をつくって地上に送るしくみである。

注目されている理由


 人工的に地中に熱交換装置をつくるこの方法は、きれいにトンネルさえ掘ることができれば、従来の高温岩体地熱発電よりも発電に成功する確実性がずっと高くなる。
 クローズドループが広まれば、これまで地熱発電を実施できなかった幅広いエリアでの開発が可能となる。また、掘削後に地下の蒸気の不足で開発が中止になるといった不測の事態を回避できる。環境への影響も小さく、いったん地上に蒸気と熱水を取り出してから戻す従来の地熱発電に比べ、地下水への影響がほとんどないとされる。また、熱源さえ見つければできるので、工期やそれにかかるコストを大幅に短縮できる。

現在の試算では、地下3000メートルまでの深さまでに限定した場合でも、世界全体の消費電力の半分に達するとみられている。日本では、原発80基分の電力を生み出せる可能性があり、そうなれば一気に地熱が主力電源の座に躍
り出る可能性がある。

現状の課題

経済性が担保できていないことが一番の課題といわれている。高温の岩盤は硬い花崗岩である。しかも、クローズドループの距離が長くないと水が十分に温まらない。そのため長距離のループを複数掘削する必要があり、費用がどうしても高額になってしまう。

世の中の注目度

現在、クローズドループを手掛けているのは、主に二つの企業グループである。

  • カナダの地熱技術開発企業「Eavor (エバー)社」

エバーは世界に先駆けてクローズドループを開発した企業で、同社の事業には、石油メジャーの「BP」(イギリスや「シェブロン」(アメリカ)などが大規模な出資をしている。石油会社は、石油依存からの脱却をにらんでの投資である。

アメリカの「Fervo Energy(ファーボ・エナジー)社」

ファーボ・エナジーは「グーグル」と提携し、発電した電気をグーグルのネバダ州全域にあるデータセンターなどに供給し始めている。グーグルは、2030年までに全世界でエネルギー使用量の100%を再生可能エネルギーに
切り替えることを目指している。

ファーボ・エナジーに資金を提供しているのは、グーグルだけではない。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツらが創設した気候変動対策を行う基金「ブレイクスルー・エナジー・べンチャーズ」や、世界最大規模のマーケットプ
レイスeBay 初代社長で大富豪のジェフリー・スコールが創設した「カプリコーン・インベストメント・グループ」、さらにフェイスブック(現・メタ)の創業者マーク・ザッカーバーグらが創業した慈善団体「チャン・ザッカーバー
グ・イニシアチブ」など、錚々たる企業・団体が名を連ねている。

いままさに、クローズドループをめぐってグローバル企業による熱い投資合戦が行われている。しかもこの動きは、単なる儲け話というわけではない。地熱発電が世界のエネルギー問題を解決し、気候変動の危機と闘う切り札として
選ばれているという証しである。

出所:「地熱革命が始まる」(プレジデント社) 図版作成:草薙伸行(PLANETPLAN DESIGN WORKS)
 

最新の記事

よく読まれている記事

カテゴリ―

ふるさと熱電について
もっと知りたい方へ

ふるさと熱電との協業や事業に関するご質問など、どのようなお問い合わせにも対応いたします。
ぜひお問い合わせフォームよりご連絡ください。

皆様のご意見やご質問をお待ちしております。

お問い合わせはこちら