熊本県小国町のファンを増やせ!大学生と挑む「地域づくりインターンの会」での地域活性化
熊本県小国町は、総面積約137平方キロメートルのうち、70%以上を山林が占める農山村地域です。多雨多湿で冷涼な気候を活かし、「小国杉」として知られるブランド杉を育んできました。

1980年代には、林業を基盤に「悠木の里づくり」と称した観光拠点の形成や地域づくりを推進してきました。
今回は当時の構想を原点とする「地域づくりインターンの会」の受け入れについて、ASOおぐに観光協会の穴井喜織さん、本年初めての参画となるふるさと熱電㈱、そして小国町のインターンに参加した学生のそれぞれの視点から、この取り組みに込めた想いを伺いました。
地域づくりインターンの会とは?
1996年に、国土庁のUJIターン促進プログラムの一環としてスタートした事業です。
継続性と自立性あるプログラムをめざし、現在は、大学研究室、地域、学生の3者によって運営されており、「地域と学生の出会い(きっかけづくり)」と「地域と学生の継続的な交流(関係の継続)」を目的とした活動を展開しています。
~目指す姿~
この活動を通して、学生は地域を訪れ、交流や体験を重ねる中で地域の暮らしや課題を深く理解し、将来に生かせる学びを得ることができます。
一方で、地域にとっては都市部の学生との関わりが新たな視点や人のつながりを生み出し、地域資源の活用や魅力発信のきっかけとなり、持続的な活性化へとつながっていきます。

小国町での「地域づくりインターンの会」参画の歴史
小国町が「地域づくりインターンの会」にはじめて参画したのは2000年頃 のことです。以来、参加の有無は年によって異なりつつも、20年以上にわたって交流を続けてきました。近年では、2024年度からASOおぐに観光協会が、受け入れを開始しています。

今回は、その受け入れの中心的な役割を担い、小国町出身者として地域人材と観光コンテンツを結びつけながら、町の未来につながるまちづくりに多方面から挑戦している穴井喜織さんに、「地域づくりインターンの会」にかける想いと、その背景にある小国町への思いを伺いました。

穴井喜織
観光地域づくりマネージャー サスティナビリティ・コーディネーター
ASOおぐに観光協会 理事 クロス部会 部会長
ASOおぐに観光協会がインターンに参画した理由
穴井:「私自身が本格的に関わるようになったのは、木魂館で受け入れをしていた2010年頃です。当時は決められたプログラムの中で、一担当として参加していましたが、コロナ禍をきっかけにプロジェクトが休止に。その後も再開の見通しが立たず、数年が過ぎていきました。
そんな中、私自身が2023年に観光協会の理事に就任し、地域課題の解決に向けて提案できる立場になったとき、ふと地域づくりインターンの会の活動を思い出しまして。人口減少や、若者の流出といった課題が続く中で、この取り組みが地域の魅力を掘り起こすきっかけや、新しい動きにつながればと思い、予算会議で提案したところ承認をいただき、2024年から再びスタートを切ることができました。」
2年間の活動の内容と、地域づくりインターンの会の魅力
穴井:「昨年度は観光客アンケートや、「BASE宿(学生宿泊拠点)」づくりを通じて、小国町の魅力を客観的に探ることをテーマにしましたが、今年はもう一歩踏み込み、「杖立温泉街」や、ふるさと熱電さんのオフィス「役場んまえ咲いた」をどう活かすかという、2つの事業提案を大きなテーマとして、活動してもらいました。

それぞれのプログラムでは、共通して学生が「小国町」をしっかり体感できるよう、地元の方とふれあえる時間をたくさん用意しています。そうした体験を通じて小国町の魅力を深く感じてもらい、そのうえで自由に事業のアイデアを考えてもらうようにしています。
都会の学生だからこそ出てくる新鮮でユニークな発想に触れられるのは、小国町にとっても大きな刺激になっていて、とても楽しい機会になっていると感じています。」
穴井喜織さんが考える、地域課題
穴井:「個人的には、杖立温泉街を盛り上げていきたいと考えています。実は親族が民宿・旅館を営んでいたこともあり、私自身のルーツは杖立温泉にありまして。現在は、「杖Bar」という杖立温泉街唯一のBarを営んでいます。
幼い頃には20軒以上あった温泉旅館も、今では13軒程に減ってしまった温泉街を見ると、もの寂しさと、危機感を感じています。

今回学生のみなさんからは「音楽フェス」や「サウナ設置」など斬新なアイデアをいただきました。若者に響くような取り組みを実現できれば、温泉街の新しい魅力づくりにつながりますし、次の世代の関心を引くことで、旅館事業の継続や地域全体のにぎわいづくりにもつながると思っています。」
ASOおぐに観光協会の仕事に加え、Barの経営、サスティナビリティ・コーディネーターと、精力的に活動を続ける穴井さん。実は、今回ふるさと熱電に参画を呼びかけたのも、他ならぬ穴井さんでした。

ふるさと熱電の地域貢献と田嶋さんの想い
ふるさと熱電が掲げる目標は、「ひと」を中心とした、地域と事業の共生による地域創生を実現すること。
事業や地域づくりのノウハウを地域に根付かせることで、企業の都合に振り回されることなく、人々が自らの力で事業や活動を育み続けられると考えています。
そして、その想いを誰よりも強く抱いているのが、常務執行役員コーポレート本部 本部長の田嶋亨基さんです。

田嶋 亨基
ふるさと熱電株式会社 常務執行役員 コーポレート本部 本部長
実は田嶋さん、学生時代に地域づくりインターンの会の活動を通して、小国町を訪れたことがあるのだとか。
2002年以降、愛知県豊根村、大分県湯布院町(現由布市)、福島県川俣町など、全国の中山間地域を訪ね歩く中で、熊本県小国町での経験も印象的だったそうです。
田嶋:「私の人生の指針を決めてくれたのが地域づくりインターンの会といっても過言ではありません。当会が全国の中山間地域との出会いのきっかけを作ってくれたおかげで、自治体や地元の方々の実態や暖かさに触れることができました。この学生時代の出会いが『原体験』となり、日本の農山漁村に貢献したいとの想いでこれまでのキャリアを積んできました。今、小国町が本社の当社で働いているのも、地域づくりインターンの会の時代に小国町に何度もお世話になったのがきっかけです。」

そんなご縁から、ふるさと熱電に加わることとなった田嶋さんに、今年度の活動に参加した思いについて、お話を伺いました。
田嶋:「当社では、地熱発電と地域活性化の2つのミッションを掲げています。地域活性化には、地域内の皆さんの想いはもちろんのこと、いわゆる『よそ者・若者・ばか者』のアイデアや関わりも大切だと思っています。地域づくりインターンの会のOBとして学生受入地域側として当会を盛り上げつつ、学生らの発想との触れ合いや刺激を通じて、当社の小国町における地域活性化拠点 ”役場んまえ咲いた” の事業構想を練りたい(あと喜織さんの活動もサポートしたい笑)と思い、今年度参加しました。」
▼役場んまえ咲いたに関する記事はこちら
地域づくりインターンの経験が今の田嶋さんの原点となったように、学生たちも小国町での活動を通して多くの刺激を受けています。約2週間のインターンに挑戦した5名の学生のうち、今回は國學院大學観光まちづくり学部の中村さんに、現地での体験や学びについてお話を伺いました。
学生インターンの体験談

中村 歩大
國學院大學 観光まちづくり学部
ー熊本県小国町にインターン先に決めたきっかけは?
中村:「私の一番興味のあることが、地域の魅力を見つけ出すこと、と同時に課題解決アプローチを考えていくことで、活動内容がマッチしていたことと、小国町が東京から一番遠かったので興味が湧き小国町に決めました。」

ーどんな2週間になりましたか?
中村:「最初の1週間はずっと豪雨だったので正直心配でしたが、フィールドワークが多かったので、充実した2週間を過ごすことができました。活用案の検討では、イメージ案の提案だけでなく、維持管理費、利益、法令まで幅広く考え抜く必要があることを学びそれがすごく貴重な経験でした。
リアルな現場を見させていただき、主体的に検討する時間をいただけたからこそ、地域の課題解決は、その土地に深く関わらないと見出すことができないものであることに気づくことができ、たくさんのことを学ぶことができた2週間でした。」

ー印象に残った活動は?
中村:「旅館の方にお話を聞く機会なんてめったになかったので、杖立温泉旅館を営む方に、実際の運営状況のお話を聞かせていただきとても刺激的でした。
またビアガーデンで町民の皆さんに「役場んまえ咲いた」や「杖立温泉」についてアンケートを取ったんですけど、一回も断られなくて、全員が答えてくださって、、、東京だとなかなかない人の温かさだったのでびっくりしました。」
ASOおぐに観光協会・ふるさと熱電・学生のつながりが生む地域活性化

小国町の豊かな自然や温かい人々に囲まれながら、学生たちは地域の現場を歩き、地元の方々と直接話をしながら考え抜く2週間を過ごしました。
「杖立温泉街」や「役場んまえ咲いた」を訪れ、町の暮らしや課題、そして人々の温かさに触れる経験は、学生たちの学びや成長につながる貴重な時間になったようです。
一方で、地域の大人たちにとっても、学生の自由で柔軟な発想や主体的な行動は、大きな刺激や気づきを与える機会となりました。今回のインターンは、単なる短期体験にとどまらず、地域と学生が互いに学び合いながらつながる、未来につながる貴重な時間となったことがうかがえます。
地域づくりインターンの会が育むのは、地域の魅力や課題を知る力だけではありません。
学生と地域が出会い、刺激を与え合う中で生まれる「人と人のつながり」が、地域の新しい動きや挑戦の原動力になるのだと感じられます。
小国町の人々と学生たちが紡いだ2週間の活動は、まだ始まったばかり。
今後も、この町の未来に向けた挑戦や、新しいつながりが少しずつ広がっていくことでしょう。
