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インタビュー

2024年4月11日

先進事例から地域おこしを学ぶ!地熱発電の財源で地域創生研修ツアーin香川県直島町

先進事例から地域おこしを学ぶ!地熱発電の財源で地域創生研修ツアーin香川県直島町


小国町岳の湯地区では、地元住民で構成される「わいた会」が地熱発電の事業主体となり、

そのわいた会から、開発・運営管理・地元調整などの業務を「ふるさと熱電」に委託する形で、地域共生型の地熱発電事業に取り組んでいます。

小国町岳の湯地区の風景。この地区では湯けむりが常時あちらこちらから湧き出ている。

この度、わいた会で地熱収益の一部を活用し、岡山県~香川県をめぐる地熱研修ツアーが開催されました。

集落からは老若男女15名が参加され、企画に携わったふるさと熱電 地域創生部2名も参加させていただきました。

研修旅行参加者の様子。わいた会より老若男女15名が参加された。

小さな集落とはいえ、旅館業・温泉業・一次産業・建設土木・年金暮らし・小中高校生と、職業や年齢も様々。
普段、集落の祭りを除いて皆さんで顔をあわせる機会も少ない中、多くの地元住民が参加した今回の地熱研修ツアーは、一体どんな意義があったのでしょうか?
わいた会の後藤会長をはじめ、参加された方々に、本研修ツアーの狙いや感想を伺ってみました。

●わいた会会長 後藤幸夫さんへのインタビュー

2017年より合同会社わいた会の代表を勤める後藤幸夫さん

ーーわいた会としての研修ツアーは、今回で7回目になりますが、そもそも始まったきっかけは?

後藤会長:もともとは「組(=集落地縁組織)」の旅行もありましたが、お金もかかるため毎年という訳にはいきませんでした。

地熱発電事業を始めて、わいた会として予算を確保できるようになってからは、コロナ禍を除いて毎年実施できており、これからの地域をどうしていくかを考える良い機会だと感じております。

アート作品の鑑賞を通じて、それぞれの感性を共有する時間となった。

ーー2023年の長崎県の小浜市・佐賀県への訪問についで、今回は岡山県・香川県の研修とのことですが、選定理由を伺えますか?

後藤会長:過去のワークショップの際に各地の地域創生事業を見ていて、その際特に香川県の直島の事例を知り、いつか訪れたいと思っていました。

直島の立地や規模感が、岳の湯地区や小国町に似ていると感じていたため、コロナも少しずつ落ち着いた今だ!と訪問に踏み切りました。

瀬戸内海に浮かぶ直島へのアクセスは、船の利用が必須であり、香川県の高松港からは約1時間、岡山県の宇野港からは約20分の移動時間を要する。

ベネッセハウスをはじめ、地中美術館や古民家を改装した家プロジェクトを鑑賞しアートを通し直島の風土や文化を感じることができました。

ベネッセハウスミュージアムの写真。「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに1992年に開館。

ーー直島では公益財団法人 福武財団の内田様にもお話をお伺いする機会をいただきましたが、一番印象に残ったお話を教えてください。

後藤会長:直島のアート作品は島の財産である一方で、島外からの観光客、更には移住者獲得へ向けた手段であり、更にアートを起点にカフェやアンテナショップを誘致し、地域内経済循環を確立させているというお話を聞いて、とても感銘を受けました。

島内の飲食店の写真。あちらこちらでお洒落にリノベーションした建物、店舗を見かけた。

岳の湯地区では日帰り温泉や旅館はあっても、カフェやアンテナショップ等ふらっと立ち寄れる場所が少ないので、今度の第2発電所で得る資金を原資に、そういった場所も整備できたらと思っています。

今からしっかりと、5年、10年先を見据えて、地域のために、また小国町のために地熱資源を生かした唯一無二の仕掛けを作っていきたいですね。

ーーこうやって集落の皆さんと一泊二日する意義についてはどのように感じておられますか?

小国弁に「えげそ」という言葉があります。話したいけど話せない、内弁慶という意味で、普段地元では話づらくても、研修ツアーで少し話してみると実は相手も同じだったみたいな(笑)。若者も女性も男性も、こうした機会から言葉を交わし、徐々に皆さんが前に出れるような環境づくり、人材づくりに繋がればと思います。

夕食は地ビールを片手に意見交換会。

ーーありがとうございました。ふるさと熱電も地域の皆様と一緒に唯一無二の仕掛けを考えて行ければと思います。今後とも宜しくお願いいたします!

●わいた会事務局 高田直木さんにインタビュー

合同会社わいた会にて事務局活動を担う高田直木さん

ーー高田さんはご家族そろって県外から移住され、2019年7月からはわいた会の事務局も担っておられますが、まずわいた会の事務局活動をどう感じていらっしゃいますか?

高田さん:私は主に、わいた会の執行役員で実施する「執行役員会」や、わいた会全員で実施する「全体会」で議事録をとったり、事務的な資料の手配、作成を行っていますが、特に役員会での議論は、わいた会全戸30世帯が集って実施する月1の全体会や、その場に参加できない方へ正確に情報共有するという意味でも、重要だと感じています。

Iターン者として木工の仕事もしていますが、事務局の仕事をすることでより充実な日々を送れていることは有難いと思っています。

月1回わいた会全戸が揃う「全体会」会議の様子。

ーー今回の研修ツアーの意義はどのように捉えていらっしゃいますか?

高田さん:今回の直島視察で、「これなら自分たちでも出来るんじゃないか。面白そうじゃないか。」というヒントを得ることが大切だと思います。

ヒントやアイデアを得られても、それを地元で実現できるかどうかは、また一つ大きな壁があります。集落全体のインフラを対象にした、「鳥の目」を持った行政的な観点もとても大切です。

古民家をアートで再生させた「家プロジェクト」の様子。

ーー地域創生プラン一つを実現するにも、なかなか難しいのですね(汗)。

高田さん:単純に「観光客や人が集まれば良い」という訳にはいかず、岳の湯地区には観光業以外で働いている方や、高齢者の方もいます。後継者が居る家庭、居ない家庭もあります。

様々な立場の方が居るので、集落全員の賛同を得られることは難しいです。ただ有難いことに、発電事業からの財源はあります。その財源を活用し、他地域の良い事例を参考にしながら、小さな実績を少しずつ積み上げていくことと、稼ぐ部分(収益)と、お金にはならないけど大切なこと(公益)を、グルグル回していくことが大切なのではないでしょうか?

形式上の合意形成だけでは絶対ダメでとにかく一歩ずつじっくり歩む姿勢が必要です。時間軸としてそれで良いのかという自問自答もありますが。

ーー研修ツアーの意義を超えて、地域創生の営み方までご指導いただき、有難うございます。これからもよろしくお願いします!

農山村では、頼母子講や無尽といった金融機能を持つ互助組織が受け継がれていますが、過疎化・高齢化の中で消滅したり、原資が小さく使い道が限られるなど、変容しつつあります。


地熱発電により、一定規模の共通財源を持つことの良さ・難しさもありますが、ふるさと熱電では、本ツアーをはじめ集落での共同活動が、地熱事業や地域活性化にプラスに働くよう、下支えしていきたいと考えています。

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