ふるさと熱電マガジン 地域と地熱を繋げる情報を発信!

インタビュー

2024年2月1日

【岳の湯の住民にインタビュー】地熱発電で地区の食文化を継ぐ。特産品事業「ゆけむり工房」の取り組み

【岳の湯の住民にインタビュー】地熱発電で地区の食文化を継ぐ。特産品事業「ゆけむり工房」の取り組み

熊本県の北東部に位置する小国町西里の岳の湯地区。

小国町岳の湯地区の様子


小国富士と呼ばれる「涌蓋山」の麓に位置し、この地区で暮らす住民の方々は農業・牧畜業・観光業(温泉旅館・日帰温泉施設)等この土地特有の生業が根付き、自給自足の生活を送っています。

また季節ごとに「大神宮春祭り」「早水祭り」「地獄明神祭り」などの祭事を行い、先祖伝来の土地に感謝すると共に、各家庭の女性がこしらえた「振る舞い」と呼ばれる郷土料理を囲み会合を開くことで地域コミュニティが保たれ、そして文化や伝統が継承されてきました。

岳の湯地区に住む女性方々が「振る舞い」を準備している様子

住民主導の地熱発電所「わいた地熱発電所」の商用運転が開始され、わいた地熱発電所の売電収益は「子と孫が帰ってくるまちづくり」のため、わいた地区の地域創生事業へも活用されています。

その事業の一つとして、合同会社わいた会が郷土料理の継承や特産品づくりを促進するため2020年に公民館の厨房にて「惣菜製造業・飲食店営業」の許可を取得しました。

「ゆけむり工房」の取り組み

ゆけむり工房にて特産品を製造している様子

この厨房は「ゆけむり工房」と呼ばれ、地域のご婦人の方々による加工品製造に活用されています。

現在製造されているのは「椎茸まんじゅう」と「山菜おこわ」の2種類。わいた地区の日帰り温泉である「くぬぎ湯」「裕花」や「地熱珈琲」で販売されています。
これらの商品には原木しいたけや小国米、ワラビ、栗などの地元野菜がふんだんに使用されています。

椎茸まんじゅうに使用されている食材の様子。食材のほとんどは地熱乾燥保存されていたもので、

季節問わずご当地の食材を味わうことができる。

それなのにそれぞれ500円以内とお手頃価格。ご婦人の方々の知恵と工夫が詰まった逸品です。

椎茸まんじゅうと山菜おこわの様子

そんな地元の「特産品」を生み出した「ゆけむり工房」に、ふるさと熱電で栽培している「バジル」の新商品開発について相談したところ、引き受けていただけることに。

「しいたけまんじゅう」の新商品として「バジルまんじゅう」と、地熱乾燥を駆使した「地熱乾燥バジルシオ」を開発していただきました。

活用したバジルのほとんどは市場に出荷されるものではなく、色の薄さや苗の品質維持を理由に剪定され破棄予定となっていたもの。バジルを冷凍、乾燥させる等保存の効く状態に加工し、商品に活用していただいています。

岳の湯地区の乾燥小屋の様子。
鉄のパイプ内に蒸気が流れ、放熱することで小屋内が温められ、乾燥するしくみ

「ゆけむり工房」へインタビュー

新商品を開発いただいたのはわいた地区に住む美代子さん、ヒロミさん、和子さんのお三方。

現商品含め新商品開発にかける想いを伺いました。

左から和子さん、ヒロミさん、美代子さん

ーーゆけむり工房誕生の経緯を伺えますか?

美代子さん:岳の湯地区で地熱発電所が運開することになって、わいた会が公民館の厨房を活用できるよう「惣菜製造業・飲食店営業」の許可を取得してくれました。このあたりは各家庭で郷土料理はつくられていたものの特産品といえるものが無く、、、

せっかく厨房を整備いただいたのであればなにか作ってみようか。と声を掛け合い「ゆけむり工房」ができました。

ゆけむり工房にて商品を制作している様子

ーー椎茸まんじゅうや山菜おこわ完成までの道のりは長かったですか?

ヒロミさん:長かったです。なんだかんだ約3年はかかりましたね。

道行く人に試作品を食べてもらって、ああでもない、こうでもないと試行錯誤の日々でしたよ。

特産品ということでとにかく小国産のたけのこや山菜をたっぷり使っています。特に原木しいたけは和子さんが準備してくれるので助かりますね。

原木しいたけ畑の様子

和子さん:うちは原木しいたけ農家で、特に秋は収穫が大変ですが、こうやってうちで採れたしいたけを自分たちで調理して、沢山の人に食べてもらえると嬉しいですし、やりがいがありますね

ーーそんな中今回地熱バジルを活用した新商品を開発いただきました。こちらも何回も試作いただきましたよね。

美代子さん:それは勿論納得のいくまで試作するのみです。バジルはなかなか馴染みがなかったので最初は難しかったですが、依頼を受けた限りは追求しましたよ。

地熱バジルの様子。わいた地熱発電所では発電で発生した熱水を地下へ還元する前に
農業用ハウスの暖房設備として二次利用している。

最初にできたのはバジルカレーまんじゅう。

美代子さん:独特なバジルを万人受けするように餡にカレーを入れてみたところ、意外といけましたね。馴染みある味になって食べやすくなりました。完成間近の最終の味決めが一番悩みましたね。

和子さん:そうそう。もう食べすぎて味が分からなくなってきて(笑)完成したときはようやくできた~って肩の荷が下りる思いでしたね。

2023年12月のゆけむりマルシェでは揚げてみたのですが、評判もよく一安心でした。

とにかく暑かったですけどね。

ーー当社はバジルの収穫、販売止まりだったので追求される皆様の姿は本当に頼もしく、ありがたかったです。バジル塩も試食段階から社内で大好評でした。

2023年12月より店頭にて販売開始した「地熱乾燥バジルシオ」

ヒロミさん:バジル塩は案外早くできましたね。バジル塩の場合はバジルを地熱乾燥小屋で乾燥させてつくるので保存も効きますし、何より以外に汎用性も高いんですよ。


鶏肉にオリーブオイルと一緒に漬けてやくとお手軽にバジルチキンができますし、おにぎりにまぶしても美味しいですよ。お土産にぴったりです。

ーー皆さんの商品開発にかける突き詰める姿勢や商品クオリティには圧巻でした。最後に、今後ゆけむり工房の活動は広げていく予定でしょうか?

ヒロミさん:自分たちのできる範囲で続けて行きたいですね。わいた会もせっかく場所を提供してくれているので、今後もうまくこの場所を地域で活用していきたいです。

美代子さん:この岳の湯地区も高齢化が進んでいるので、担い手がなかなか見つからないのも悩みの一つです。できる限り良い文化は繋いでいきたいですが、少人数ではできることも限られます。

このゆけむり工房を起点に少しずつ住民が集い、更には若者が働くことができる場所も増え、地域全体で盛り上がっていければ嬉しいですね。

和子さん:家業が忙しい中でもこの工房の活動は続けて行きたいです。何より自分たちのアイデアが形となって、この地区の特産品となっていくことはとってもワクワクしますしね。とは言っても健康第一ですので身体と相談しながら、みんなと助け合って続けていればと思っています。

ふるさと熱電の「地域共生」の考え方

地元の食材や特産品はその土地の風土を表す象徴です。

そんな中高齢化が進む地方では販路拡大や後継者不足における不安も少なくありません。

実際ここ岳の湯地区でも平均年齢が60歳を超え、様々な場面で人員不足によって事業の存続がはばかられています。

ふるさと熱電は地元住民の方々の事業に混ざり、携わらせていただくことで、本当の意味でその土地の文化や伝統を理解し、その結果地域創生の手がかりが見いだせると考えています。

今後もふるさと熱電は住民とのコミュニケーションを通して地域への理解を深め地域の活性化を目指していきます。

一覧を見る