Q.どうやって発電するの?
地熱発電の主流は「フラッシュ方式」
地熱発電の発電方式にはいくつか種類があるが、基本的な原理は同じだ。地下1~3キロに位置する地熱貯留層に向けて生産井を掘り、そこから取り出した高温高圧の蒸気・熱水の熱エネルギーでタービンを回して発電する。
なかでも最も主流の発電方式が「フラッシュ方式」だ。日本で稼働している地熱発電所のほとんどは、この方式を採用している。
フラッシュ方式では、地下から引き上げた200℃以上の高温・高圧の蒸気や熱水を気水分離器で蒸気と熱水に分け、蒸気で直接タービンを回す。タービンは発電機に接続され、この回転によって電気をつくる。
分けられた熱水は還元井から地下に戻される。地下深くにある高温の水は、高い圧力下にあるため沸点を超えても液体のまま存在している。それを地上に引き上げるため急激に圧力が下がり、地表に到達すると一気に蒸気に変わる。この現象がフラッシュ(急激な蒸発)だ。フラッシュを一度だけ行う発電方式を「シングルフラッシュ方式」と呼ぶ。
気水分離器で分離した熱水の圧力をフラッシャー(減圧器)でさらに下げ、さらなる蒸気を取り出しタービンを回す方式を「ダブルフラッシュ方式」と呼ぶ。シングルフラッシュ方式よりも出力が約20%増加するとされ、大分県の八丁原発電所や北海道の森発電所で採用されている。
タービンを回し終えた後の蒸気は、復水器で凝縮されて温水になる。温水は、温浴施設での活用やビニールハウスの暖房、養魚などで2次・3次利用されこともある(カスケード利用と呼ばれる)。
利用し終わった温水は、冷却塔で冷却され、復水器に循環して蒸気の冷却に使われる。この水は基本的に地下に戻されるため、地下水が枯渇する心配もない。
近年導入が広がる「バイナリー方式」
高温・高圧の蒸気や熱水が必要なフラッシュ方式に対し、近年では比較的低温(150℃以下程度)でも発電できるバイナリー方式の導入が広がっている。
バイナリー方式では、地下から取り出した蒸気や熱水を直接用いるのではなく、水よりも沸点の低いペンタンや代替フロン、水とアンモニアの混合液などの二次媒体を用いて発電する。地下から引き上げた蒸気・熱水と二次媒体を蒸発器で熱交換し、二次媒体を温め蒸気化。水より沸点の低い二次媒体は、ここで蒸気に変わる。
生成された二次媒体の蒸気がタービンを回し発電。発電し終わった二次媒体は凝縮器で液体になって蒸発器に戻され、同じプロセスが繰り返される。バイナリー方式は中低温の熱資源を効率よく利用でき、かつ大規模な開発が必要ない。そのため、近年では温泉地でも導入が広がっている。
高温の温水(80℃程度)が湧き出る温泉地では、従来は水を混ぜて温度を下げ、温泉として利用してきた。しかし、バイナリー方式であれば熱を二次媒体に伝えることで温水を適温まで下げ、二次媒体で発電することで熱を無駄にすることなく有効活用ができるのだ。適温になった温水は、そのまま浴用の温泉水として利用できる。
日本で最初の本格的なバイナリー方式の地熱発電所は八丁原発電所で、フラッシュ方式と併設されている。
現在の国内最大のバイナリー発電所は大分県の菅原バイナリー発電所である。北海道・函館では、国内最大規模となるバイナリー発電所・南茅部地熱発電所の建設が進められている。
出所:「地熱革命が始まる」(プレジデント社)