これまで地熱発電が進まなかった理由⑤:規制緩和や補助金の増設は進むも政府の支援策がまだ不十分
2030年度に地熱発電の設備容量約150万kWという目標を達成し、さらに地熱を主力電源にするには、地熱開発促進のための抜本的な支援強化が急務となっている。
求められるのは総合的な支援
国の政策は、地熱発電事業の進展に大きく関わる。日本以外の国でも、政府の支援策が充実している時期には進展し、それがなくなると停滞する傾向が明らかになっている。2015(平成27)年まで地熱発電の設備容量で世界第2位だったフィリピンでは、国営の電力会社が開発を進めていた時期に容量が増えたが、民営化してからは停滞している。そのフィリピンを抜いて第2位となったインドネシアでは、国の機関が地下探査を行い、その情報を民間と共有したことで開発が進んだ。
日本の地熱発電の設備容量は、2020(令和2)年時点で約60万kWである。2014(平成26)年度の設備容量(約55万kW)からあまり増えていないことからわかるように、開発は停滞してきた。
ただ、決して政府が無策だったというわけではない。2012(平成24)年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の価格は、地熱発電を優遇している。また、調査や掘削時にはJOGMECによる補助金が投入されてきた。さらに、温暖化対策や再エネ推進の方針を定めたエネルギー基本計画で、政府は2030年度の地熱発電の設備容量を、現在のおよそ2.5倍となる150万kWに拡大することを目標にした。自然公園法や温泉法の改訂による規制緩和も、その一環として進められたものだ。
しかし目標達成のためには、数万kWの大規模地熱発電所が、毎年稼働し始めなければならない。経産省の分析では、現在見込まれている地熱発電所は小規模なものが多く、これを積み上げても6万kW程度増えるにすぎない。目標達成にはほど遠い現実がある。ましてや、地熱を主力電源にするには到底およばない。開発を促進するためには、規制緩和や補助金の増額だけでなく、これまで述べてきた地熱開発事業にある数多くのリスクを低減するための、総合的な支援策が求められている。
出所:「地熱革命が始まる」(プレジデント社)