Q.日本に地熱発電所はどれくらいある?
近年は小規模な発電所の開発も進む
世界有数の火山大国である日本では現在、70以上の地熱発電所が稼働している。
火山は大陸プレートの100~150キロ下に沈み込んだ海洋プレートの地表に、海溝にほぼ平行に連なっている。この火山の連なりを「火山フロント」と呼ぶ。
地熱発電所はこの火山フロント周辺に建設されている。なかでも火山活動が比較的活発な東北地方と九州地方に集中しており、東北では岩手県の八幡平や秋田県の玉川温泉周辺、九州では雲仙・普賢岳や霧島連山の周辺が代表的だ。これらの地域は地殻が薄く、地下の高温の岩石が地表近くに存在するため、地熱発電に適している。
日本の地熱発電の歴史は1919(大正8)年にまで遡る。海軍中将・山内万寿治が大分県の別府で噴気孔の掘削に成功したのが始まりだ。1925(大正14)年にはその事業を引き継いだ東京電燈研究所長・太刀川平治が日本で初めて地熱発電に成功した。
第二次大戦後、電力の安定供給という課題に悩まされた日本は、地熱発電の実用化に国を挙げて取り組む。1966(昭和41)年に岩手県・八幡平の松川地熱発電所が日本初の本格的な地熱発電所として運転を開始。翌年には大分県の大岳発電所も稼働を開始した。1970年代に二度のオイルショックを経て石油代替エネルギー政策(サンシャイン政策)が推進され、地熱発電所の建設が相次ぐ。1996(平成8)年には地熱設備の認可出力が50万kWに達した。
近年では小規模地熱発電所の建設も進んでいる。小規模発電所は大規模なものに比べて建設コストが低く、地域の電力需要に合わせて設計できる。環境への影響も小さいため地域住民の受け入れが容易であるのも特徴だ。2021(令和3)年時点で調査・開発中の地熱発電所の83地点のうち62地点が中規模(1~10MW)・小規模(1MW未満)であることからも、注目度の高さがうかがえる。
2012(平成24)年、再生可能エネルギーで生成された電力を国が定めた固定価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」の開始により、地熱発電の普及と投資が促進されたことも小規模発電所の増加要因の一つ。北海道の洞爺湖温泉や長崎県の小浜温泉など、温泉街での建設も進んでいる。
出所:「地熱革命が始まる」(プレジデント社)