これまで地熱発電が進まなかった理由③:地熱資源の約8割が「自然公園」の地下に存在する
国立公園・国定公園内の地熱開発は、長年にわたって厳しく規制されてきた。近年、その規制の緩和が着実に進んでいる。
地熱に追い風となる規制緩和が進む
日本の地熱資源は、その8割ほどが国立・国定公園などの自然公園内の地下に存在している。そのため「自然公園法」に基づいて、自然保護の観点から長年にわたり地熱開発が厳しく規制されてきた。
国立・国定公園などの自然公園は、その場所の重要性に応じて上から、特別保護区、第一種~第三種特別地域、普通地域と分けられていて、貴重な自然環境のほとんどは特別保護区と第一種特別地域にあるとされている。第二種~第三種特別保護区や普通地域では、場所により域内での商業、宿泊業などの営利活動も行われている。そのため、地熱開発を全面禁止するのは厳しすぎるのではないかという疑問の声は以前からあった。
その後、政府が地球温暖化対策として地熱発電を推進する方針を打ち出すと、1994(平成6)年、2012(平成24)年、2015(平成27)年と段階的に規制緩和が進んだ。さらに2021(令和3)年には、環境大臣による「地熱開発加速化プラン」が発表される。「保護と利活用の両立へ発想を転換する」と掲げたこのプランを受けて、自然公園法のさらなる改正が実施された。
2023(令和5)年末時点では、特別保護区と第一種特別地域(地表部)での地熱開発は禁止だが、普通地域での開発は可能となった。第一種特別保護区に関しては、地下に向けて外から斜めに井戸を掘削することが認められるようになった(2015年)。原則開発禁止だった第二種と第三種特別地域についても、地表部に工作物を置く開発が許可された(2021年)。規制する側だった環境省が、地熱開発を促進する立場になったことは大きな変化である。
こうした規制緩和により、現在も開発が禁止されている特別保護地区や第一種特別地域の地表部を除き、地熱発電の導入ポテンシャルのうちおよそ6~7割を開発できる可能性が出てきている。

出所:「地熱革命が始まる」(プレジデント社)