ふるさと熱電マガジン

地域と地熱を繋げる情報を発信! ふるさと熱電マガジン

これまで地熱発電が進まなかった理由②:掘ってみなければわからない「探査」と「掘削」の不確実性

地下に眠る地熱資源を発電に生かすためには、さまざまな調査・探査を経なければならない。掘削にも不確実性がともなう。

100%確実な探査手法は存在しない

地熱発電の特徴は、その資源が地下に存在することにある。環境省や産業技術総合研究所(産総研)では、地熱資源のポテンシャルマップを作成して公開している。それにより、地下の温度分布はある程度明らかになっている。

ただし、地熱資源の温度が高ければどこでも発電ができるというわけではない。カギとなるのは、地下にある水蒸気の「温度」と「量」である。

一般的に、地下から出る水蒸気の温度が高いほど、発電効率は高くなる。温度が低くても発電はするが、下限値を下回ってしまうと、経済的に採算が合わなくなってしまう。

地熱の水蒸気をそのまま使ってタービンを回して発電する「フラッシュ方式」の場合、およそ200~300℃の高温の水蒸気や熱水が必要となる。それが可能なのは、一般的に火山の周辺に限られる。より低い温度で発電が可能な「バイナリー発電」の場合は、現在の技術では70℃が下限とされている。そして最も重要なのは、このような水蒸気を安定的に得られることだ。

そのため発電事業者は、地表からさまざまな調査・探査手法を駆使して、高温の地熱資源を探り当てる確率を高めていく。

地熱資源を探す手順は、まず広域を調査し対象地点を一定規模(約10平方キロ)に絞り込む。その範囲で、地下の構造を把握するため、調査・探査を行っていく。その結果に基づいて、調査用の井戸を掘ることになる。

調査・探査には、大きく分けて3段階がある。

まずは地質調査だ。地表から断層の構造や地質の各種測定を行う。次は地化学調査である。地表に流出している蒸気やガス、温泉水などの化学成分などの割合を分析する。そして第3段階が、物理探査である。地表や空中で、地下の状況を測定して、地下構造を推定する。おもに重力探査や電磁探査がよく用いられている。

しかし、100%確実な探査手法はいまのところ存在しない。地下の構造が正確にどうなっているのか、そしてその熱源から採算が取れるほど十分に発電できる水蒸気が出ているかどうかは、最終的には掘ってみなければわからない。

そこで、調査・探査を経てターゲットを絞った地点に、調査用の井戸を複数本掘り、高温の水蒸気が出ているかを確認する。

地熱発電が利用するのは、主に地下1000~3000メートルに存在する地熱貯留層と呼ばれる熱源である。2000メートルの井戸の掘削には、1本5億~10億円ほどの費用かかり、それを複数本掘らなければならない。それだけの費用をかけたにもかかわらず、採算が合う温度の蒸気が安定的に得られないことが多い。

この「掘ってみなければわからない」という不確実性が、地熱発電事業のリスクを高めている。

石油や天然ガスと何が違うのか

同じ地下資源でも、石油や天然ガス資源については、調査・探査の方法は飛躍的に進化をとげており、探査や掘削の成功率は高まっている。しかし、地熱発電の分野では探査に困難がつきまとい、成功率は低いままとなっていた。両者では何が違うのだろうか。

まずは地表の地形の違いだ。石油とガスが発見される地表面は平野部が多く、大型機械の搬入が容易である。しかし、日本の地熱資源の地表の多くは急峻な火山地帯にあり、大型の機械の搬入が困難である。

次に地中内の地層や地質も違う。石油とガスの地層は基本的に水平でかつ砂岩という均質な岩石のため、探査によって地層を特定できれば、そこに狙いを定めて資源を得ることが比較的容易となる。しかし地熱資源の場合、場所によって異なる不定形な亀裂の集合であるため、探査によってある程度狙いを定めても、必ずしも地熱貯留層に当たらないリスクがある。

さらに、探査にかけられる費用をめぐる状況も違う。石油とガスについては掘削が成功した場合の利益率が高く、投資回収ができる見込みが立ちやすい。そのため、探査に多額のコストをかけることができる。一方、地熱発電では利益率が低いため、探査にかけるコストに制約が出てしまう。

こうした状況を変えるため、政府もさまざまな支援制度を設けて民間企業の調査・探査を後押ししようとしている。

現在、支援の窓口となっているのは、JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)である。JOGMECでは、調査が進んでいない地域を対象に基礎調査を行い、事業者に必要なデータを提供している。また、探査や掘削に関して、内容によって費用の半額から全額の助成を行っている。

助成を受けた事業が必ずしも成功するわけではないが、地熱発電が進展するためにはこうした政府の支援が欠かせないのである。

出所:「地熱革命が始まる」(プレジデント社)

最新の記事

よく読まれている記事

カテゴリ―

ふるさと熱電について
もっと知りたい方へ

ふるさと熱電との協業や事業に関するご質問など、どのようなお問い合わせにも対応いたします。
ぜひお問い合わせフォームよりご連絡ください。

皆様のご意見やご質問をお待ちしております。

お問い合わせはこちら