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地熱発電所の電気主任技術者とは?ー仕事内容と安全に電気を届ける使命ー

わいた第1地熱発電所(以下第1発電所)の年間発電量は、約1,400万kWh。1世帯の年間電力使用量を平均3,600kWhと仮定すると、小国町の総世帯数約3,100世帯を上回る電力量に相当します。

地熱発電所の運転には基本、「ボイラー・タービン主任技術者」と「電気主任技術者」それぞれ1名ずつの在籍が必要不可欠です。

今回は、第1発電所の電気主任技術者 大崎さんに、地熱発電所での業務内容から小国町での暮らしぶりまで、幅広くお話を伺いました。


2024年入社

技術部 電気主任技術者 大崎 洋一

地熱発電所での電気主任技術者の仕事ってどんな仕事がありますか?

一般的に、発電所の電気部門が担当する業務は主に4つに分かれます。

1つ目は、発電所運転に関わる電気設備の管理・点検作業を行う保守監督業務。

2つ目は、電気事業法等に基づく法定点検や報告書類の作成を行う電気保安業務。

3つ目は、社員に対して特別安全指導や保安教育を行う技術指導業務。

そして4つ目は、電気設備の概念設計や改造を手掛ける開発業務です。

わいた地区では今「わいた第2地熱発電所」(以下第2発電所)の建設工事真っ最中ですので、開発業務の仕事が佳境を迎えています。

ご担当されているお仕事はどんな内容でしょうか?

私は、開発業務と保守監督業務を担当していますが、開発業務では主に送電設備を担当し、発電した電気を送電系統へ安全かつ確実に供給する為の設備づくりを目指してきました。

第2発電所の設備容量は4,995kWで、第1発電所(設備容量:1,995kW)のような高圧系統への接続と異なり、特別高圧系統への接続が必要となります。

特別高圧系統への接続となると、発電所本体に加え、自営線や変電所といった設備を自社で整備する必要があり、それぞれを安全に運用する為には、遠隔監視制御システムの構築が欠かせません。

発電所や変電所は、遠く離れた運転室からモニターを通じて発電や送電の状況を把握し、操作ができるような仕組みが必要なんですけど、こうしたシステムには高い安全性と安定性が必要不可欠ですので、そういった制御技術分野の設計・構築に携わりました。

ちょっと専門的な話になりますが、発電所や変電所用の通信線は災害や緊急時にも影響を受けないように、独自回線で構築します。またその通信が例え遮断されても発電所や変電所が安全な状態を維持出来るような仕組みでつくらなければなりません。

そのため私達電気チームは、それぞれの設備の制御回路を理解して、関係する各業者と密に連携しながら、システム構築を進めています。

地熱発電は雨の日も風の日も365日稼働するので、だからこそ、どんな状況でも安定して運転できるように、万全な体制を整えるシステムを今後も構築していければと思っています。

保守監督業務も多岐にわたりますが、その中で分かりやすいもので言うと、モニタリング装置のメンテナンスを担当しています。

第1発電所は、住居やわいた温泉郷に隣接しているため、環境への配慮や、地域との共生を大切にし、温泉モニタリングや河川モニタリングを実施しています。

ただ、発電所がある「わいた地区」では、日常的に各所から湯けむりが立ち上っているため、モニタリング装置にも負荷がかかり、どうしても故障のリスクは避けられません。

そのため、地域の皆さまや「わいた会」の方々、そして当社が安心して発電を続けられるよう、装置の状態を常に監視し、トラブルを未然に防ぐ「予防保全」にも力を入れています。

苦労エピソードや、やりがいについて教えてください。

自営線(一般的には電柱のこと)、変電所における遠隔監視制御システムの構築がとっても大変でした。

特に、第2発電所の自営線は、総延長が約13kmにも及び、わいた地区を超えて約200本の電柱を設置し、さらに約5kmにわたる地中埋設工事を行う必要があったため、骨が折れる思いでした。

また、自営線を整備するには様々な許認可申請や、土木工事との兼ね合いを考える必要があります。

電気・土木チームそして地域創生部と協力して汗水を流しながら自営線ルートの地域の皆様のご理解とご協力をいただく中で、ようやく自営線の完成が見えてきているところです。

改めて考えてみると、発電所建設という大きなプロジェクトは、なかなか経験できるものではなく、当然一人では成し遂げられない仕事ですので、社内外の多くの人が携わるこのプロジェクトに参加できていることは、貴重な経験になっていると感じています。

正直、技術分野については、最高を目指し続けるとキリがなく、予算内で設計していくことは、時に負担にも感じますが、より工夫を重ね、日々実践していくことで、より最適なものをつくっていけると思うので最善を尽くしていこうと思います。

小国町での暮らしはどうですか?

自然豊かで町全体がのどかな雰囲気に包まれている小国町では、仕事で疲れたときも、外の空気を吸うだけで気分がリフレッシュできます。

また、社員の田中一身さんが夜に営んでいる「田中Bar」にもよく足を運び、職場の皆さんと仕事終わりに語り合ったり、地域の方々との交流を楽しんだりしています。

一人でも気軽に立ち寄れるほど温かな雰囲気のおかげで、これまであまり飲めなかったお酒も少しずつ楽しめるようになり、個人的にはそれがちょっとした嬉しい変化でした。

アットホームな雰囲気に癒されながら、地元の魅力や人の温かさを改めて感じられる場所があってよかったなと感じています。
小国町での暮らしは、自然の豊かさだけでなく人とのつながりの心地よさもあり、日々の生活が豊かになったなと感じています。

これから入社する方々へのメッセージ

地熱発電所は再生可能エネルギーの一つとして、国が目指す「2050年カーボンニュートラル」に貢献する重要な役割を担っています。

地熱発電所のほとんどが、大手電力会社で運営されていますので、当社のような30人に満たないベンチャー企業が、この分野で挑戦していること自体、非常に珍しいケースだと思います。

幅広い業務に携わることは苦労も多いですが、その分沢山を経験することができ、自身のスキルアップにも繋がるため、成長を実感できる環境だと思います。

何より、主体的に発電所開発に関われることで、社員みんなで「会社を創っている」という実感が持てるのも、大きな魅力の一つです。別業界からの転職者も多く、それぞれがこれまでの経験や視点を活かして仕事ができる環境かと思いますので、一緒に働ける仲間が増えてくれると嬉しいです。


~取材を終えて~

発電所の安定運用を陰で支える電気主任技術者のお仕事は、地道で緻密な仕事でありながら、地域や事業を守る、非常に責任の大きな役割であることを改めて実感しました。

表にはなかなか見えない日々の努力こそが、発電所の安全・安定を支えていることを気付かされました。

たくさんの苦労もチーム一丸で挑戦し続ける、大崎さんの今後に注目です。

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